ESGという言葉が広まり、評価指標やチェックリストとして扱われる場面は増えました。
しかし私たちは、ESGを「評価されるための項目」だとは考えていません。
ESGは、会社が何を選び、何を捨て、どこにリソースを割くのかを決めるための「判断軸」です。
言い換えれば、ESGとは「結果」ではなく、「考え方」そのものです。
評価を意識したESGは、いずれ形骸化します。
一方で、意思決定に組み込まれたESGは、日々の現場判断に自然と染み込み、結果として数字と信頼の両方を残します。
この記事では、私たちがESGをどのように捉え、どのように経営判断に使っているのかを、理想論ではなく現場と意思決定の言葉で整理します。
なぜ「評価項目としてのESG」は弱いのか
ESGが評価項目になると、必ず次の現象が起きます。
- 「やっている感」を出すことが目的になる
- 説明資料が増え、現場の負担が増す
- 判断が遅くなり、責任の所在が曖昧になる
これはESGが悪いのではありません。
ESGを“後付けの評価基準”として使っていることが問題です。
評価項目としてのESGは、必ず「チェックされる側」と「チェックする側」を生みます。
すると現場では、「減点されないための行動」が最適解になり、判断の質は下がります。
経営に必要なのは、正解を当てることではありません。
迷ったときに、どちらを選ぶかを決める基準です。
ESGは本来、そのためのものです。
私たちがESGを「意思決定の軸」と呼ぶ理由
私たちがESGを使う場面は、決して特別な会議だけではありません。
- この修理方法を選ぶべきか
- この部品は再利用すべきか、交換すべきか
- この仕事を受けるか、断るか
- 人を増やすのか、仕組みを変えるのか
こうした日々の小さな判断の積み重ねこそが、会社の姿勢を決めます。
ESGを意思決定の軸として使うとは、
「環境に良いからやる」「社会的に正しいからやる」ではなく、
長期的に見て、持続可能な判断かどうか
現場と顧客と会社の三方が崩れないか
この問いを、常に先に置くということです。
E・S・Gを分解して考えない
ESGの議論でよくある誤りは、E・S・Gを個別に扱うことです。
環境だけを見て、現場が回らなくなる
社会性だけを重視して、利益が出なくなる
ガバナンスだけを固めて、動けなくなる
私たちは、E・S・Gを分けて考えません。
例えば、部品の再利用です。
これは環境配慮(E)であり、同時にコスト最適化(G)であり、顧客への説明責任(S)でもあります。
ESGは三つの箱ではなく、一つの判断フレームです。
分解した瞬間に、現場では使えなくなります。
「やらないESG」を決めるという選択
もう一つ、私たちが大切にしている考え方があります。
それは、「やらないESG」を明確にすることです。
すべてを網羅しようとするESGは、必ず破綻します。
現場は有限で、時間も人も限られています。
だから私たちは、
- 今の事業に直接関係しない取り組み
- 現場に過度な負担をかけるだけの施策
- 説明のためだけに存在する制度
これらは、意図的にやりません。
ESGは“善意の総合点”ではありません。
自社にとって意味のある判断基準だけを持つことが、結果的に強いESGになります。
現場でESGが機能する条件
ESGを意思決定の軸として機能させるために、私たちは次の点を重視しています。
判断が現場で完結できること
上に確認しないと進められないESGは、使われなくなります。
判断基準は、現場が自分で使える言葉でなければなりません。
数字と結びついていること
ESGを語るとき、数字を避けるのは簡単です。
しかし、コスト・時間・品質と結びつかないESGは、長続きしません。
続けられる仕組みであること
一度きりの取り組みは、ESGではありません。
日常業務に組み込めるかどうかが、すべてです。
ESGは「会社の性格」を決める
ESGを意思決定の軸にすると、会社の性格がはっきりします。
- 安易な近道を選ばない
- 説明できない仕事はしない
- 現場の無理を前提にしない
これはきれいごとではなく、長く事業を続けるための戦略です。
短期的に見れば、非効率に見える判断もあります。
しかし、数年単位で見ると、信頼・品質・再現性として必ず返ってきます。
理想論としてのESGは、もう十分だ
ESGを語る言葉は、すでに世の中に溢れています。
問題は、「それが意思決定に使われているかどうか」です。
掲げているかどうかではなく、迷ったときに、どちらを選んだか。
そこにESGがあるかどうかが、すべてです。
私たちはこれからも、ESGを評価項目としてではなく、
判断の基準として、現場で使い続けます。
それが結果として、数字にも、信頼にも、事業の継続性にもつながると信じているからです。
ESGは「判断の言語」だ
ESGは流行語でも、飾りでもありません。
会社がどういう判断をする組織なのかを示す、共通言語です。
評価されるためのESGではなく、迷ったときに立ち返れるESGを。
それが、私たちの考えるESGです。
